グローバルなEV市場の拡大に伴い、その競争力を決めるのはバッテリー技術の進化です。そんな中、車載電池供給シェアで世界5位につける韓国SK ONは、次世代電池の開発を行っています。
全固体電池の開発をはじめとするSK ONの取り組みを紹介します。
SK ONとは

SK ONは、韓国のSKイノベーション社の電気自動車(EV)用バッテリー子会社として、2021年に分社化されました。SK ONは韓国の石油化学大手として、石油開発、素材、化学製品、そしてバッテリーの開発・製造を手掛けています。グローバルでのEV駆動バッテリーの供給大手として、Ford、VW、現代、北京汽車などにバッテリーを供給しています。ヒュンダイ Ioniq 5や起亜 EV6、メルセデスベンツ EQA、EQBなどの車種に搭載されており、ハンガリーや米国のSK Onの工場でバッテリーを生産しています。
電池事業を営む企業は、EVなどに用いられる車載と、非常用電源などに用いられるバッテリー蓄電システム(ESS)の両方を手掛けることが多いです。一方でSK ONの主な事業はEV用電池(車載)を中心としており、ESS製品の売り上げは限定的です。
電気自動車用バッテリーの生産施設を韓国、米国、中国、ハンガリーで行っており、2022年の88GWhから、2025年までに220GWhに生産能力を増やす計画を進めています。バッテリー工場の生産効率も80~90%と高く、車載電池供給シェアで世界5位につけている電池大手です。
全固体電池開発
2024年後半には全固体電池の試作機を開発し、2028年の実用化を目指す計画です。さらに、2021年10月にはSolid Powerとの協業を通じて、セルの開発と生産を強化しています。
その電池の正極・負極などの構成については明らかにされていません。
SK ONは、全固体電池の実用化に向けて、電池開発とパイロット工場の建設を急ピッチで進めています。SK ONは、2025年までに電池研究所(Daejeon Battery Research Institute)に4700億ウォン(約3億5100万米ドル)を投資し、研究施設を拡張。次世代電池パイロット工場とグローバル品質管理センターの設立を目指しています。
車載用リチウムイオン電池
2023年上半期、SK ONが供給する車載用バッテリーの量は16.1%増の15.9GWhとなっています。これまで、SK ONはニッケル・コバルト・マンガン(NCM)電池に注力してきましたが、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の研究も強化しています。SKONは、InterBattery 2023展示会で航続距離が向上したLFPバッテリーのプロトタイプを披露しました。
米国での展開
SK ONは、車載電池の世界シェア7%でありながら、北米ではうまく立ち回っています。
米国政府が「インフレ抑制法」(IRA)に基づいてEV3車種を補助金対象として選出した中、SK Onのバッテリーが搭載されているのは10モデルと非常に多いです。この中には、Ford F-150 LightningやID.4シリーズなどが含まれていおり、北米で一定の強さを見せています。
車載電池のシェアは、韓国企業としてはLGエナジーソリューション(ES)に次ぐ2番手ではありますが、3番手であるサムスンSDIに比べると、大手からの受注を多く受けている印象があります。LGESのシェア14%に比べればSK ONは7%(2022)と小さいですが、電池企業としては強豪です。今後、中国の電池企業がシェアを伸ばしてくることも考えられ、北米でのIRA法にうまく対応するなど、主要な市場での生き残り戦略が必要です。
まとめ
このように、SK ONはバッテリー事業での急成長とともに、全固体電池の開発という新しいフロンティアにも挑戦しており、今後の動向が注目されます。
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