BMWの搭載する全固体電池の全貌

車載電池

全固体電池は、次世代のバッテリー技術として、自動車産業を中心に多大な注目を集めています。特に、BMWも全固体電池の実用化に向けた取り組みを進めており、その一環としてSolid Powerという企業と協力しています。

この記事では、BMWの全固体電池技術に焦点を当て、その特徴や課題、今後の展望について詳しく見ていきます。

BMWはSolid Power社と全固体電池を共同開発

BMWとSolid Powerは、全固体電池の生産プロセスの共同研究を進めています。ミュンヘン近郊のパルスドルフにある「セル生産コンピテンスセンター(CMCC)」に、全固体電池の試験生産ラインを設置する予定です。このプロジェクトは、両社の全固体電池の商業化スケジュールの一部として進められており、Solid Powerは2023年中に試験用のフルスケールの電池セルをBMWに提供する予定です。

SolidPowerにはBMWのほかに、FordやSKOnが出資しています。

エネルギー密度は330Wh/kgを超える

Solid Powerは2020年に全固体電池のプロトタイプを生産を開始しました。質量エネルギー密度は330Wh/kgと非常に高く、電池セルとして20Ahの容量となります。

体積エネルギー密度も1200Wh/Lと非常に高く、電解液を使用する三元系リチウムイオンバッテリーの700kWh/L前後と比べると、大幅な向上です。また、室温での充電は15分で50%まで充電が可能とされています。

BMWの全固体電池の材料構成

SolidPower社が開発しBMWに搭載される全固体電池は、独自の硫化物型の固体電解質と、負極に高含有シリコンとリチウム金属、正極にチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)を使用しています。

負極にはシリコンorリチウム金属

SolidPower社の全固体電池の大きな特徴は、負極の材料にあります。

従来のリチウムイオン電池の負極材料は黒鉛(グラファイト)です。グラファイトは実用化されている負極材であるものの、その比容量は372 mAh g-1と決して高くはありません。

グラファイトに代わる次世代リチウムイオン電池の負極材として、シリコン材料が注目されています。シリコンの理論比容量は4200m[Ah g-1]と、グラファイトと比較して10倍以上高く、電池の容量を10倍以上に高めることができます。

一方で、Siの体積膨張率は黒鉛の28倍で、充電すると電池パックがどらやきのように膨張します。この膨張を抑制して電池寿命を確保することが難しいとされており、SolidPowerもこの課題には直面しているはずです。

SolidPower社はシリコン負極と同様に、リチウム金属負極も開発しています。

リチウム金属負極は、リチウム金属を負極に用いることで高いエネルギー密度を実現するもので、同じくリチウム金属負極を開発するエンパワー社は、質量エネルギー密度 389Wh/kgを実現しています。

リチウム金属負極を使用する電池も、充放電の際にセルが膨張するという問題があります。膨張による変形が繰り返されると、サイクル性能が低下し電池の劣化につながります。

正極にはNMCを用いる

正極にはNMC系を用いています。

NMC正極とは、リチウムイオン電池の正極材料の一種で、主にニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)の3つの遷移金属を主成分とするものを指します。MNCは、これら3つの遷移金属の頭文字を取って命名されています。

現在のリチウムイオン電池の正極に多く用いられている正極で、特に高いエネルギー密度を必要とする高級車によく用いられています。

NMC正極は、ニッケル量を増やすほどエネルギー密度が上がることが知られており、今後ニッケル量を増やした正極材料を用いて高いエネルギー密度を実現する企業が増えることが予測されます。

BMWに搭載される全固体電池も、ハイニッケルの正極を用いるものと考えられます。

実用化は2025年以降との見方が強い

2021年時点でBMWの幹部は、Solid Powerの技術が完全に確立されるまでには、まだ4-5年かかるとの見解を示しています。したがって、全固体電池が市場に本格的に投入されるのは、おそらく2025年頃となりそうです。

トヨタ自動車など、全固体電池で先行するとして知られる企業も、2027-2030年での実用化を宣言しており、BMWの全固体電池も同様のタイミングとなることが予想されます。

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