中国新興EV企業「AVATR(アバター)」の実力は?

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AVATR Technologyは、中国の新興電気自動車(EV)メーカーであり、その成長と技術の進歩に注目が集まっています。Huaweiと中国電池大手CATLとの提携により、新興企業でありながら非常に高品質な商品を展開しています。

AVATR(アバター)のEVの技術的特徴と今後の展望について考察します。

AVATR Technologyとは

AVATR Technologyは、2018年に設立された電気自動車(EV)のスタートアップです。AVATR Technologyは、中国の自動車メーカーである長安汽車(Changan Automobile)とEVメーカーのNIOの合弁会社「Changan-Nio」として立ち上げられました。

一方で、合弁立ち上げからわずか2年後の2020年、NIOは全株式を長安汽車に全株式を譲渡し撤退。その後、世界最大のバッテリーメーカーであるCATLと、電子機器製造大手のファーウェイが出資し、「AVATR Technology」に社名を変更しました。

出資したファーウェイはソフトウェアのサポート、CATLはバッテリー技術を提供しているため、AVATR Technology自社で最新のソフトウェアやバッテリーをゼロから開発する必要はなく、提携によるアドバンテージを得ています。

親会社の長安汽車(Changan Automobile)は1862 年に設立された4万人の従業員を抱える大企業で、中華人民共和国の重慶に本社を置いています。AVATRのほかに、長安フォード、長安マツダなどの合弁を傘下に収めてブランド製品を展開しています。

CHNが開発を強力にサポートしている

AVATRのEVは、長安汽車、Huawei、CATLが共同開発したCHNと呼ばれるスマートプラットフォームをベースにしています。ファーウェイのソフトウェア・サポートとCATLのバッテリー技術があることはAVATRの強みでもあり、自社開発しなくとも最新鋭のソフトウェアと電池が手に入る環境は、新興EV企業における安心材料と言えます。

実際の開発では、ファーウェイの従業員が1000人以上、開発現場である重慶にやってきて、AVATRのエンジニアと協力してEVモデルの開発を行っているとされており、その協力関係の強固さが伺えます。

電池と車体に関しては、CATLのEVプラットフォームを利用しているため、AVATRのEVには当然CATLのバッテリーが搭載されています。近年発表された急速充電バッテリー「ShenXing」も搭載するとしていますが、まだどの車種に搭載するかは確定していません。

そもそもベンチャーと呼んでいいのか?

AVATRは誕生から5年の非上場企業で、位置づけは間違いなくベンチャーです。

一方で、AVATRが長安汽車、Huawei、CATLという中国大手の支援を受けて開発した車は、当然レベルも高いものになっています。そもそも、これだけ大企業の支援を受けた車種が「ベンチャーの製品」とされてよいものかも疑問ではあります。

大企業が力を合わせてベンチャーの製品を開発している、と言っても、あながち間違いではないです。

販売面でも大企業の力を得ています。華為技術(ファーウェイ)は自社のスマートフォン販売店でAVATRの電気自動車(EV)を販売する計画を発表しました。Huaweiが支援する自動車メーカーの商品を、自社のネットワークを活用して広く販売する計画のようです。計画中の販売店は20店舗とのこと。

AVATRのモデル

AVATRは特に高級車市場をターゲットに、複数のモデルの電気自動車を販売しています。主なラインナップは、SUVのAVATR11と、セダンタイプのAVATR12です。

AVATR最初のEV:AVATR 11

Avatr 11

最初のEVモデルである11(ワン・ワン)は、ミッドサイズSUVタイプのEVで、AVATR 11の最低価格は日本円で約660万円です。

AVATR 11には、ファーウェイのHarmonyOS 4.0というインフォテイメントシステムが用いられています。インテリアの質感は非常に高く、インフォテイメントシステムのレベルも高いことで知られています。

床下にはCATLが供給するEV用バッテリーが搭載されています。バッテリーとシャシーについては、CATLのCIICと呼ばれるスケートボートシャーシが利用されており、バッテリーパックがボディを兼ねる「Cell to Body」構造となっています。

スケートボードシャシーはEV用の部品類を効率よく配置し、スペース効率を改善できると目されるプラットフォームです。電池パック、モーター、冷却システム、電圧制御システムなどのユニットをシャシーと共同設計することで、従来の電池ユニットに比べて原材料やスペースを節約します。

結果、重量も軽くなるため、EVの航続距離を伸ばすことができます。

AVATR 011

なお、AVATR 11には、特別仕様車の011もラインナップされています。世界で500台限定で生産された車両のようで、チーフデザイナーが気合を入れてデザインした車両、という位置づけです。

AVATR2車種目:AVATR 12

AVATR 12

2023年の下半期に発表されたAVATR2台目のモデルは「12(ワン・ツー)」と呼ばれるファストバック・セダンです。この車はテスラ・モデル3の競合車種として開発されたと想像できます。

エクステリアは、BMW 6シリーズおよび7シリーズの車両も設計した元 BMWのデザイナー、ナデル・ファギザデによってデザインされています。価格は約650万円から、AWDモデルは約900万円です。

車載システムには、SUVのAVATR11と同じくHarmonyOS 4.0が搭載されており、インテリアには15.6インチの大きなスクリーンを装備。

また、AVATR車には特有の「HALO」と呼ばれるインフォテイメントが、ハンドルとフロントガラスの間に設置されています。ここには車両の情報や、デジタルサイドミラーの画面を表示するなど多機能に用いられます。

海外メディアでは、AVATRの車がテスラのコピーのように見えると評されています。確かに、車両のコンセプトはテスラを彷彿させるところですが、中国ではテスラのコピー車が既たくさん作られているため、中国内で独自の発展を遂げた中国独自のコンセプトを更にパクった「コピーのコピー」車とも言えます。

販売台数はまだ少ない

2023年の1月から6月までの半年間に、AVATR 11は10,755台販売されました。

この10万台という台数は、競合のシャオペン(Xpeng)が2023年の1-6月で4万台、NIOが5万台を販売するなかでは、AVATRの規模は大きいとは言い切れません。

各社の四半期あたりの販売台数の比較。Li Autoが2023年に入ってから好調を維持している(各社発表をもとに当サイト作成)

市場では、新興EVメーカーの損益分岐点台数(利益が生まれる最低の販売台数)は年間20万台との見方があります。中国新興EVのなかでは、Li Autoは2023年には20万台を超えられそうに見えますが、NIO(見込み10万台)とXpeng(見込み8万台)は、まだ損益分岐点台数に届きそうにありません。

販売を伸ばしているLi Autoは新興と言いつつ、設立は2005年と比較的老舗です。販売している車両もEVではなくハイブリッドが主流です。

AVATRも、損益分岐点台数を超える販売を実現できるかどうか、今後数年間の動向に注目が集まります。

上場の計画はあるとするが、情報は少ない

出資元の長安汽車は以前「AVATRは独立上場計画がある」と述べていました。

EVの新興企業は、米国で上場することも珍しくなく、最近ではベトナムの新興EV企業のVinFastが米国上場を果たしました。

AVATRも上場計画があるようですが、目立った動きはありません。中国企業の米国上場は困難を極めるとも考えられ、資金調達した資金で製品開発を継続しているAVATRの経営が、上場まで維持できるかが気になるところです。

まとめ

中国の新興EVメーカーAVATR Technologyを紹介しました。

長安汽車、Huawei、CATLといった大企業の共同開発するプラットフォームを活用することで、短期間で年間2万台以上販売するメーカーに成長しつつあります。

今後、AVATRが成長を遂げられるかどうかは、販売拡大の波に乗れるか、そして群雄割拠の中国市場において「AVATRでなければ得られない価値」を提供できるかにかかっています。

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この記事を書いた人

某自動車メーカー勤務、主に計算系の基礎研究と設計応用に従事してます。
自動車に関する技術や、シミュレーション、機械学習に興味のある方に役に立ちそうなことを書いてます。

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